RESEARCH 佐賀大学の研究

微細藻類を生物資源とし
カーボンニュートラル社会
実現の大きな力に

海洋エネルギー研究所及び
リージョナル・イノベーションセンター
「さが藻類産業共同研究講座」

出村 幹英 准教授

2016年に締結された佐賀市、筑波大学、本学の研究協定に基づき、2018年に筑波大学より着任。佐賀市清掃工場で稼働する世界初の排ガス中からのCO₂分離回収装置によって得られたCO₂を利用した微細藻類の培養と有効利用研究に取り組む。

医薬原料や工業原料など微細藻類の可能性に着目

試験管サイズから数ℓボトルサイズの微細藻類培養。
微細藻類は光合成を⾏うので、光をあて、⼆酸化炭素(数%程度)を通気します。
微細藻類は植物プランクトンとも呼ばれ、大きさが1㎜から1㎛程度の顕微鏡レベルの藻類です。水中でも、植物と同じように二酸化炭素を吸って増殖し、森と同じような役割を果たしています。微細藻類の中には人間にとって有用な成分を作り出す種類があり、たとえばクロレラやユーグレナなどはすでにサプリメントとして流通しています。他にも、医薬原料や肥料、飼料、工業原料になる可能性を秘めていることがわかっており、微細藻類を生物資源として利用する研究は、世界中で注目を集めている分野の一つです。藻類活用で新商品開発や新規事業を目指す企業も増えてきています。

根気強い探索・研究で新たな有用物質や新種を発見

100ℓ以上の微細藻類培養。ビニールハウス内での⼤量培養実験も進⾏中です。
佐賀大学の藻類研究は、微細藻類研究の第一人者として、出村幹英准教授が佐賀大学に赴任してきたことから本格的に始まり、2018年3月には佐賀大学構内に「さが藻類産業開発研究センター」が設置されました。出村研究室では、まず佐賀県各地にある池をくまなく巡って水を採取し、新たな微細藻類の探索を始めました。その結果、ヘマトコッカスの中に血圧の上昇を抑える新規物質があることや、DHAを産出するイカダモの新種があることを発見しました。現在確認されているだけでも数万種類を超えると言われている微細藻類の中から、活用できる種類や物質を探索することは非常に根気を必要とすることで、今も引き続き行っています。
有用成分を含む微細藻類を発見したら、その微細藻類を大量に培養し、有効成分を抽出し、濃縮・乾燥・精製させることが必要ですが、そのための研究もまた着々と成果をあげています。

さまざまな分野と力を合わせ新たな産業の創出を目指す

微細藻類にはどんな成分があるのか、どんな新規産業となりうるのか、まだまだ多くの可能性を秘めています。出村准教授は、微細藻類の有用成分がどんな企業や産業にマッチングするのかを考えながら、研究開発を積み重ねています。また、微細藻類の生物資源活用で大きく注目すべき点は、地球温暖化の大きな原因ともいわれるCO₂を有効利用して微細藻類を育て、その新たな生物資源で新規産業を生み出すというサイクルです。環境問題に対応しながら新規産業を創出していくことで、カーボンニュートラル社会、資源循環社会の実現を目指せると考えられています。
佐賀大学の微細藻類の研究には、出村准教授をはじめ、様々な分野の先生方が自由参加で集い、「μABproject(microAlgal Biomass Project)」として活動しています。それぞれの専門家がそれぞれの視点で研究を進め、微細藻類の新たな資源としての活用を目指しています。