
RESEARCH 佐賀大学の研究
長年解明されなかった
かゆみのメカニズムを発見
アトピー性皮膚炎の悩みに
明るい光を
医学部 分子生命科学講座アレルギー学分野
出原 賢治 特任教授
1984年九州大学医学部卒業後、九州大学医学部附属病院や福岡逓信病院などで勤務。1991年からDNAX分子細胞生物学研究所(アメリカ)にポストドクトラルフェローとして留学。帰国後、国立遺伝学研究所や九州大学医学部に勤め、2000年に佐賀大学医学部教授に就任。2024年より現職。
アトピー性皮膚炎のかゆみの原因究明に取り組む出原賢治教授は、
2012年にアトピー性皮膚炎と深い関わりのある物質ペリオスチンを発見し、
2023年1月にペリオスチンの働きを阻害する物質CP4715を特定しました。
これらの発見により、アトピー性皮膚炎の治療薬の開発は、大きく前進したと考えられます。
難解なかゆみのメカニズムを解明するための物質を特定

アトピー性皮膚炎の方々にとってかゆみは非常に大きな問題であるにもかかわらず、長年そのメカニズムは解明されませんでした。治療方法もステロイド外用薬が基本ですが、重症の場合はかゆみのコントロールは非常に難しく、多くの患者を悩ませてきました。
出原教授が発見したかゆみのメカニズムは、アトピー性皮膚炎の皮膚組織ではペリオスチンという物質が大量に作られ、知覚神経上のインテグリンという物質と結合することでかゆみが脳に伝わるというものでした。ペリオスチンとインテグリンの結合を防げれば、かゆみを改善できると考えて研究を続けた結果、それらの結合を阻害する物質CP4715を特定することができました。
出原教授が発見したかゆみのメカニズムは、アトピー性皮膚炎の皮膚組織ではペリオスチンという物質が大量に作られ、知覚神経上のインテグリンという物質と結合することでかゆみが脳に伝わるというものでした。ペリオスチンとインテグリンの結合を防げれば、かゆみを改善できると考えて研究を続けた結果、それらの結合を阻害する物質CP4715を特定することができました。
地道な研究の積み重ねから画期的な発見を

長年困難とされてきたかゆみの研究が大きく進んだ背景には、顔に強いかゆみを訴えるアトピー性皮膚炎のモデルマウス「FADSマウス」の開発が大きく役立ちました。生まれつきペリオスチンを多く産生するFADSマウスから意図的にペリオスチンをなくし、そのマウスが「顔をひっかくかどうか」を根気強く観察を続けることで、ペリオスチンがかゆみに大きく関与していることを突き止めたのです。
この発見をきっかけに研究が大きく前進し、CP4715の発見につながったと言えます。
この発見をきっかけに研究が大きく前進し、CP4715の発見につながったと言えます。
クラウドファンディングで新薬の開発に勢いを

かゆみを改善する物質が判明したら、いよいよ新薬の開発ですが、新薬の開発には多額の費用が必要です。そこで取り組んだのが、クラウドファンディングでした。初めに設けた目標額1,000万円は早期に達成したことから、新たに目標2,000万円を設定しました。最終日までに目標額を上回る寄付が集まったことからも、アトピー性皮膚炎の新薬開発に大きな期待が寄せられていることがうかがえました。
現在は、新薬の形状(外用薬か、経口薬か、など)や安全性などを検証しながら、早い段階での実用化を目指して研究に取り組んでいます。
現在は、新薬の形状(外用薬か、経口薬か、など)や安全性などを検証しながら、早い段階での実用化を目指して研究に取り組んでいます。