RESEARCH 佐賀大学の研究

実用化へ加速!
ダイヤモンド半導体デバイスで
社会に大きなインパクトを

理工学部 理工学科 電気電子工学部門

嘉数 誠 教授

1990年日本電信電話株式会社に入社し、基礎研究所に所属。研究に取り組みながら、日本国内の大学、ドイツやフランスの大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所などで講師や研究員を務める。2011年に佐賀大学大学院の教授に就任。

直径1インチ(約2.5センチメートル)のダイヤモンド半導体ウエハー
測定中のダイヤモンド半導体ウエハー上に作製した6G用半導体デバイスの顕微鏡

現代生活に欠かせない半導体
ダイヤモンドに大きな期待

半導体は、電気エネルギーを制御・交換する時に重要な役割を果たします。身近な家電製品などに使われる半導体の主な材質はシリコンで、もっと大電力を必要とする新幹線や携帯電話の基地局などには炭化ケイ素や窒化ガリウムを使った次世代のパワー半導体が使われています。
そして、人工衛星やテレビの地上波放送局や電気自動車のように大容量の周波数・電力を必要とする産業で大きな期待を寄せられているのが、ダイヤモンド半導体です。炭化ケイ素や窒化ガリウムのパワー半導体と比較しても、電力効率がケタ違いに優れているのが大きな特徴です。

独自の発明をきっかけに研究が一気に加速

ダイヤモンドは随分前から究極の半導体として世界中で注目を集めてきましたが、ダイヤモンド半導体の開発には非常に高度な技術が必要であるため、多くの研究者が途中で断念せざるを得ない状況でした。理工学部の嘉数誠教授が、ダイヤモンドに可能性を見いだして研究を始めたのは1990年頃。なかなか成果は上がりませんでしたが、「方向を間違わなければ絶対にできる」との信念のもとに研究を続け、2021年にダイヤモンド半導体の作製に成功しました。
この成功のきっかけとなったのは、10年ほど前に「ダイヤモンドに二酸化窒素を吸着させると電気が通りやすくなる」ことを発明したことでした。この発明により研究を困難にしていた大きな課題を克服することができ、成功へとつながりました。

さまざまな課題をクリアし実用化へ向けて前進

佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターの実験設備を利用し、ダイヤモンドが世界最高品質であることをシンクロトロンで実証。
ダイヤモンド半導体作製の成功をうけ、実用化に向けた研究が始まりました。ダイヤモンド半導体は高出力であるために、それまでの機器では電圧を測定できないといった問題が起きた時には、電圧を測定するためのオリジナルの機器を開発し、現在では4,226Vの動作も計測しています。原料となる人工ダイヤモンドについても、不純物が少なくクオリティの高い結晶が必要であるため、天然ガスから独自で製造しています。
2023年にはダイヤモンド半導体パワー回路を世界で初めて開発し、高速スイッチング動作や長時間連続動作を確認しました。さらに、これまでは耐久性がないとされてきたダイヤモンド半導体ですが、3,456時間(2024年9月25日現在)の動作を確認し、記録はさらに更新を続けて耐久性を証明しています。
ダイヤモンド半導体は、放熱性、耐電圧性、耐放射線に優れていることもわかっており、宇宙空間でも安定して動作することが確認されていることから、JAXAとの大型プロジェクトも進んでいます。